「連鎖」
 9月11日以来、できる限り、牧師などのために開かれる危機や痛みの中におられる方々のために気をつける事、なすべきことは何か、ということを学ぶセミナーに積極的に参加するようになりました。それは自分自身の弱さや未熟さを感じ、気持ちだけではどうにもならない部分もあることに気づかされたからです。
 そんな中で最初に参加したセミナーの講師がブルース・ポーターという牧師でした。彼は一昨年の春に、デンバー郊外のコロンバイン高校で起こった、2人の高校生が学校に爆弾を仕掛け、自動小銃などで生徒と先生13人を殺害し、自分たちも自殺をしたあの事件の犠牲者のレイチェル・ スコットという女の子の母親の教会の牧師でした。自らがボランティアの消防士だという彼はそのセミナーの前からWTCの現場に入って、救助隊と共に祈り、彼らを支えていました。「言葉はいらない、共にいることが大切だ」「こういう事件が起こってから人々の中に入って行こうと思っても遅い。いつもコミュニティーの中で生きなさい」など、彼の語る一言一言に説得力がありました。
 そんな彼が、最後にレイチェルのストーリーを話してくれました。犯人となった二人はクリスチャンが嫌いでした。彼らの作成したビデオの中で、レイチェルは名指しで殺したい相手に挙げられていました。”I love Jesus, I love Jesus, むかつくー”って感じで・・・。ある日、その2人がフィルムのクラスで学校でみんなが殺される、っていう映画を作ろうと言い出した時、先生も、だれもそれを止めようとしなかったそうです。でも、彼女は穏やかに、しかしはっきりとした態度で、彼らを止めようとしました。そして、彼女は彼らの怒りの犠牲となったのです。3発の銃弾が彼女の急所をはずした後、犯人の一人が彼女の髪の毛をつかんで、「これでもおまえは神なんか信じるのか?」と聞きました。”You know that I do”という答えに、犯人は最後の一発を彼女の頭に撃ち込んだのです。
 生前彼女が「わたしの倫理基準」という題でエッセイの宿題を書きました。「正直であり、人の痛みがわかり、すべての人の中によいものを見出す」というのが彼女の倫理基準でした。そしてこう書いています。「私の基準はみんなのとは全く違うかもしれない。私の基準なんて絶対に実現しないおとぎ話みたいなもんだと思えるかもしれない、けれども、あなたからはじめてみてください。そして、それがあなたの周りの人々の人生にどんな影響を与えるかを見てください。あなたは一つのchain reactionをはじめることになるかもしれないのです」その彼女の言葉どおり彼女は自分の死を通して、周りの人々に大きな影響を与えました。そして、今、たくさんの人々が彼女のメッセージを携えて全米の中学高校を回っているのです。
 暗い雲がたちこめるような時代です。わたしもその鎖の一つに入れてもらえれば、と思います。
 「悪を行う者のゆえに、心を悩ますな。・・・主を信頼して善を行え。」
(詩篇37篇1,3節)
月報2001年11月号より